【ペン専用】超新星★56
妬み嫉妬叩き合いはほどほどに〜
次の日、佐藤はスハルトの私邸を訪問する。スハルトの庶民的な生活ぶりに好感を持つ。子供たちへは贈物をふんだんに持っていった。人形から汽車、自転車まで持ちこんだので、子供たちは大喜びする。寛子夫人はスハルト夫人とすっかり気が合い、この日は夫人得意の「お料理教室」で、すき焼の作り方を伝授する。
佐藤とスハルトはここでもしばらく話し合う。佐藤から「最近の北京には手を焼くことが多いが、お互いドアを閉めないでおこう。孤立化はさせない方がいい」といった話をする。
気がかりだった羽田のデモ事件は、各紙が筆をそろえて学生の行動を非難したので、佐藤も気をよくする。社会党は学生支持の声明を出したので具合が悪かった。
佐藤の三日間のインドネシア滞在は、スハルト政権最初の国賓でもあり、また日本側の協力に期待することも大きかったので熱烈歓迎に終始した。佐藤のインドネシア訪問は両国首脳の厚い友情をつくり上げる。この後、スハルトは一貫して佐藤に兄事する態度で接することになる。佐藤も同行の記者団も、この国での厚遇に満足したが、余りにも熱狂的な歓送迎に、この国の国民性に不安も感じた。
佐藤とスハルトはここでもしばらく話し合う。佐藤から「最近の北京には手を焼くことが多いが、お互いドアを閉めないでおこう。孤立化はさせない方がいい」といった話をする。
気がかりだった羽田のデモ事件は、各紙が筆をそろえて学生の行動を非難したので、佐藤も気をよくする。社会党は学生支持の声明を出したので具合が悪かった。
佐藤の三日間のインドネシア滞在は、スハルト政権最初の国賓でもあり、また日本側の協力に期待することも大きかったので熱烈歓迎に終始した。佐藤のインドネシア訪問は両国首脳の厚い友情をつくり上げる。この後、スハルトは一貫して佐藤に兄事する態度で接することになる。佐藤も同行の記者団も、この国での厚遇に満足したが、余りにも熱狂的な歓送迎に、この国の国民性に不安も感じた。
佐藤首相が「吉田元首相死去」の知らせを聞いたのは、10月20日午後1時すぎであった。「20日午前11時50分、大磯の自宅で、心筋梗塞のため、89歳の生涯を終えた」という知らせであった。その時佐藤は、マルコス大統領と第二回目の会談を終え、実質的にフィリピンでの仕事が片づいたので、同行の記者団と昼食を共にしながら懇談していた。知らせを聞いて、佐藤は一瞬けわしい表情をみせ、ついで涙をこらえているように見えた。
予想はしていたが「やはり、遂に」の思いがあった。佐藤は即刻、木村官房長官に電話して、自民党の福田幹事長や前副総裁の川島正次郎ら党首脳も希望しているというので、吉田元首相を国葬をもって遇するよう準備を命ずる。また旅行の日程をきり上げて、明21日、サイゴンは立ち寄るだけで宿泊せず、同日中に帰国することを決める。吉田元首相の娘、和子の婚家麻生家にも連絡した。
「旅先で吉田先生の訃報に接し痛惜にたえない。吉田先生が戦後日本の再建につくされた業績は、国民一人ひとりが高く評価してくれると思う」佐藤は以上のような談話を発表した。
予想はしていたが「やはり、遂に」の思いがあった。佐藤は即刻、木村官房長官に電話して、自民党の福田幹事長や前副総裁の川島正次郎ら党首脳も希望しているというので、吉田元首相を国葬をもって遇するよう準備を命ずる。また旅行の日程をきり上げて、明21日、サイゴンは立ち寄るだけで宿泊せず、同日中に帰国することを決める。吉田元首相の娘、和子の婚家麻生家にも連絡した。
「旅先で吉田先生の訃報に接し痛惜にたえない。吉田先生が戦後日本の再建につくされた業績は、国民一人ひとりが高く評価してくれると思う」佐藤は以上のような談話を発表した。
佐藤首相が「吉田元首相死去」の知らせを聞いたのは、10月20日午後1時すぎであった。「20日午前11時50分、大磯の自宅で、心筋梗塞のため、89歳の生涯を終えた」という知らせであった。その時佐藤は、マルコス大統領と第二回目の会談を終え、実質的にフィリピンでの仕事が片づいたので、同行の記者団と昼食を共にしながら懇談していた。知らせを聞いて、佐藤は一瞬けわしい表情をみせ、ついで涙をこらえているように見えた。
予想はしていたが「やはり、遂に」の思いがあった。佐藤は即刻、木村官房長官に電話して、自民党の福田幹事長や前副総裁の川島正次郎ら党首脳も希望しているというので、吉田元首相を国葬をもって遇するよう準備を命ずる。また旅行の日程をきり上げて、明21日、サイゴンは立ち寄るだけで宿泊せず、同日中に帰国することを決める。吉田元首相の娘、和子の婚家麻生家にも連絡した。
「旅先で吉田先生の訃報に接し痛惜にたえない。吉田先生が戦後日本の再建につくされた業績は、国民一人ひとりが高く評価してくれると思う」佐藤は以上のような談話を発表した。
予想はしていたが「やはり、遂に」の思いがあった。佐藤は即刻、木村官房長官に電話して、自民党の福田幹事長や前副総裁の川島正次郎ら党首脳も希望しているというので、吉田元首相を国葬をもって遇するよう準備を命ずる。また旅行の日程をきり上げて、明21日、サイゴンは立ち寄るだけで宿泊せず、同日中に帰国することを決める。吉田元首相の娘、和子の婚家麻生家にも連絡した。
「旅先で吉田先生の訃報に接し痛惜にたえない。吉田先生が戦後日本の再建につくされた業績は、国民一人ひとりが高く評価してくれると思う」佐藤は以上のような談話を発表した。
夕刻、大統領官邸で行われた内外記者会見の前、佐藤と記者団は一緒に吉田元首相の冥福をいのり、一分間の黙祷を行った。珍しいことである。佐藤と会見した記者団の大部分は、吉田時代を知らない人たちであったろうが、佐藤首相の心情を思い、同情したのだろう。佐藤も冒頭の黙祷に感激していた。それにこの会見では、佐藤にとって厭な質問は何一つ出さないという思いやりも示された。
フィリピンを去る21日の朝、佐藤夫妻はマルコス夫妻と朝食を共にする。食後お互いにみやげ物の交換を行ったが、マルコス夫妻からの贈りものが派手なのに驚かされる。その中にフィリピンのナショナル・コスチュームがあり、佐藤夫妻は早速着用してマルコス夫妻と記念撮影をする。軽くて着心地がよく、何より涼しい。
サイゴンに着いたのは、この日午前11時半。タン・ソン・ニュット空港には、グエン・カオ・キ首相兼副大統領夫妻はじめ、政府、軍の首脳が出迎える。空港には即時出動の準備を整えたジェット戦闘爆撃機がずらりと並び、戦時国家の厳しさに佐藤も緊張する。
フィリピンを去る21日の朝、佐藤夫妻はマルコス夫妻と朝食を共にする。食後お互いにみやげ物の交換を行ったが、マルコス夫妻からの贈りものが派手なのに驚かされる。その中にフィリピンのナショナル・コスチュームがあり、佐藤夫妻は早速着用してマルコス夫妻と記念撮影をする。軽くて着心地がよく、何より涼しい。
サイゴンに着いたのは、この日午前11時半。タン・ソン・ニュット空港には、グエン・カオ・キ首相兼副大統領夫妻はじめ、政府、軍の首脳が出迎える。空港には即時出動の準備を整えたジェット戦闘爆撃機がずらりと並び、戦時国家の厳しさに佐藤も緊張する。
夕刻、大統領官邸で行われた内外記者会見の前、佐藤と記者団は一緒に吉田元首相の冥福をいのり、一分間の黙祷を行った。珍しいことである。佐藤と会見した記者団の大部分は、吉田時代を知らない人たちであったろうが、佐藤首相の心情を思い、同情したのだろう。佐藤も冒頭の黙祷に感激していた。それにこの会見では、佐藤にとって厭な質問は何一つ出さないという思いやりも示された。
フィリピンを去る21日の朝、佐藤夫妻はマルコス夫妻と朝食を共にする。食後お互いにみやげ物の交換を行ったが、マルコス夫妻からの贈りものが派手なのに驚かされる。その中にフィリピンのナショナル・コスチュームがあり、佐藤夫妻は早速着用してマルコス夫妻と記念撮影をする。軽くて着心地がよく、何より涼しい。
サイゴンに着いたのは、この日午前11時半。タン・ソン・ニュット空港には、グエン・カオ・キ首相兼副大統領夫妻はじめ、政府、軍の首脳が出迎える。空港には即時出動の準備を整えたジェット戦闘爆撃機がずらりと並び、戦時国家の厳しさに佐藤も緊張する。
フィリピンを去る21日の朝、佐藤夫妻はマルコス夫妻と朝食を共にする。食後お互いにみやげ物の交換を行ったが、マルコス夫妻からの贈りものが派手なのに驚かされる。その中にフィリピンのナショナル・コスチュームがあり、佐藤夫妻は早速着用してマルコス夫妻と記念撮影をする。軽くて着心地がよく、何より涼しい。
サイゴンに着いたのは、この日午前11時半。タン・ソン・ニュット空港には、グエン・カオ・キ首相兼副大統領夫妻はじめ、政府、軍の首脳が出迎える。空港には即時出動の準備を整えたジェット戦闘爆撃機がずらりと並び、戦時国家の厳しさに佐藤も緊張する。
空港行事を済ませて、直ちに独立宮殿でグエン・バン・チュー大統領(国家指導委員会議長)との会談に入る。引続いてグエン・カオ・キ首相と会談、共同声明を発表する。声明要旨は次の通りである。
「佐藤首相は南ベトナムが独立のため払っている努力に対し、理解と同情を示すとともに、一日も早い紛争の平和的かつ公正な解決を希望し、そのため日本も出来るだけの努力を払う決意を表明した。チュー議長は、日本からの国際協力に感謝の意を表明するとともに、これらの援助が継続されるよう要望した」
共同声明はともあれ、佐藤首相とチュー大統領、キ首相の会談を通じ、南ベトナム側にも具体的な平和達成への腹案もなく、キ首相自身はハノイと直接交渉を行いたいとさえ言っているものの、やはり現実性がなく、この戦争の泥沼化がかえって浮き彫りにされた感じであった。佐藤にとっても南ベトナム訪問は、結局「ベトナムも行ってはみたが」という結果に終り、当初予想した通り、平和は遠い、手の届かぬところにあった。サイゴン滞在はわずかに四時間。吉田元首相の死に急がされて、佐藤は昼食もとらず、酷暑のサイゴンを後にする。
「佐藤首相は南ベトナムが独立のため払っている努力に対し、理解と同情を示すとともに、一日も早い紛争の平和的かつ公正な解決を希望し、そのため日本も出来るだけの努力を払う決意を表明した。チュー議長は、日本からの国際協力に感謝の意を表明するとともに、これらの援助が継続されるよう要望した」
共同声明はともあれ、佐藤首相とチュー大統領、キ首相の会談を通じ、南ベトナム側にも具体的な平和達成への腹案もなく、キ首相自身はハノイと直接交渉を行いたいとさえ言っているものの、やはり現実性がなく、この戦争の泥沼化がかえって浮き彫りにされた感じであった。佐藤にとっても南ベトナム訪問は、結局「ベトナムも行ってはみたが」という結果に終り、当初予想した通り、平和は遠い、手の届かぬところにあった。サイゴン滞在はわずかに四時間。吉田元首相の死に急がされて、佐藤は昼食もとらず、酷暑のサイゴンを後にする。
空港行事を済ませて、直ちに独立宮殿でグエン・バン・チュー大統領(国家指導委員会議長)との会談に入る。引続いてグエン・カオ・キ首相と会談、共同声明を発表する。声明要旨は次の通りである。
「佐藤首相は南ベトナムが独立のため払っている努力に対し、理解と同情を示すとともに、一日も早い紛争の平和的かつ公正な解決を希望し、そのため日本も出来るだけの努力を払う決意を表明した。チュー議長は、日本からの国際協力に感謝の意を表明するとともに、これらの援助が継続されるよう要望した」
共同声明はともあれ、佐藤首相とチュー大統領、キ首相の会談を通じ、南ベトナム側にも具体的な平和達成への腹案もなく、キ首相自身はハノイと直接交渉を行いたいとさえ言っているものの、やはり現実性がなく、この戦争の泥沼化がかえって浮き彫りにされた感じであった。佐藤にとっても南ベトナム訪問は、結局「ベトナムも行ってはみたが」という結果に終り、当初予想した通り、平和は遠い、手の届かぬところにあった。サイゴン滞在はわずかに四時間。吉田元首相の死に急がされて、佐藤は昼食もとらず、酷暑のサイゴンを後にする。
「佐藤首相は南ベトナムが独立のため払っている努力に対し、理解と同情を示すとともに、一日も早い紛争の平和的かつ公正な解決を希望し、そのため日本も出来るだけの努力を払う決意を表明した。チュー議長は、日本からの国際協力に感謝の意を表明するとともに、これらの援助が継続されるよう要望した」
共同声明はともあれ、佐藤首相とチュー大統領、キ首相の会談を通じ、南ベトナム側にも具体的な平和達成への腹案もなく、キ首相自身はハノイと直接交渉を行いたいとさえ言っているものの、やはり現実性がなく、この戦争の泥沼化がかえって浮き彫りにされた感じであった。佐藤にとっても南ベトナム訪問は、結局「ベトナムも行ってはみたが」という結果に終り、当初予想した通り、平和は遠い、手の届かぬところにあった。サイゴン滞在はわずかに四時間。吉田元首相の死に急がされて、佐藤は昼食もとらず、酷暑のサイゴンを後にする。
サイゴンの首相宿舎には爆弾がしかけられており、もし一泊すれば大事件が発生したという話が後でひろまった。またしても吉田に救われたという説明つきであった。爆弾説は別としても、ベトナム訪問には議論が多く、佐藤は初めから気が重かった。
佐藤首相の東南アジア諸国歴訪の旅は終った。佐藤の外遊目的は、東南アジア諸国の実情を自身の眼で確かめ、相手国に平和と繁栄を願望する日本の立場を理解してもらうことが一つ。さらにはアジア最大の問題であるベトナムの平和と中国の問題について話し合い、訪問国と日本の二国間の懸案を解決する、ことなどであった。目的の大部分、とくに訪問国と日本の二国間問題については、期待通りの成果をあげ得たといえよう。しかしベトナム問題の出口は、すべての国が熱望しているにも拘らず、見出だすことが出来なかった。中国に対しては、どの国も恐怖心を抱いていた。中国の核実験や自国内の共産勢力に対する中国の支援について、多少でも非難めいた発言をする相手に対し、中国はあらん限りの悪態をつき、国境を接する国は怒り怖れながら寡黙になっていた。佐藤にはこれらの国々の痛みがよく理解出来た。
佐藤首相の東南アジア諸国歴訪の旅は終った。佐藤の外遊目的は、東南アジア諸国の実情を自身の眼で確かめ、相手国に平和と繁栄を願望する日本の立場を理解してもらうことが一つ。さらにはアジア最大の問題であるベトナムの平和と中国の問題について話し合い、訪問国と日本の二国間の懸案を解決する、ことなどであった。目的の大部分、とくに訪問国と日本の二国間問題については、期待通りの成果をあげ得たといえよう。しかしベトナム問題の出口は、すべての国が熱望しているにも拘らず、見出だすことが出来なかった。中国に対しては、どの国も恐怖心を抱いていた。中国の核実験や自国内の共産勢力に対する中国の支援について、多少でも非難めいた発言をする相手に対し、中国はあらん限りの悪態をつき、国境を接する国は怒り怖れながら寡黙になっていた。佐藤にはこれらの国々の痛みがよく理解出来た。
サイゴンの首相宿舎には爆弾がしかけられており、もし一泊すれば大事件が発生したという話が後でひろまった。またしても吉田に救われたという説明つきであった。爆弾説は別としても、ベトナム訪問には議論が多く、佐藤は初めから気が重かった。
佐藤首相の東南アジア諸国歴訪の旅は終った。佐藤の外遊目的は、東南アジア諸国の実情を自身の眼で確かめ、相手国に平和と繁栄を願望する日本の立場を理解してもらうことが一つ。さらにはアジア最大の問題であるベトナムの平和と中国の問題について話し合い、訪問国と日本の二国間の懸案を解決する、ことなどであった。目的の大部分、とくに訪問国と日本の二国間問題については、期待通りの成果をあげ得たといえよう。しかしベトナム問題の出口は、すべての国が熱望しているにも拘らず、見出だすことが出来なかった。中国に対しては、どの国も恐怖心を抱いていた。中国の核実験や自国内の共産勢力に対する中国の支援について、多少でも非難めいた発言をする相手に対し、中国はあらん限りの悪態をつき、国境を接する国は怒り怖れながら寡黙になっていた。佐藤にはこれらの国々の痛みがよく理解出来た。
佐藤首相の東南アジア諸国歴訪の旅は終った。佐藤の外遊目的は、東南アジア諸国の実情を自身の眼で確かめ、相手国に平和と繁栄を願望する日本の立場を理解してもらうことが一つ。さらにはアジア最大の問題であるベトナムの平和と中国の問題について話し合い、訪問国と日本の二国間の懸案を解決する、ことなどであった。目的の大部分、とくに訪問国と日本の二国間問題については、期待通りの成果をあげ得たといえよう。しかしベトナム問題の出口は、すべての国が熱望しているにも拘らず、見出だすことが出来なかった。中国に対しては、どの国も恐怖心を抱いていた。中国の核実験や自国内の共産勢力に対する中国の支援について、多少でも非難めいた発言をする相手に対し、中国はあらん限りの悪態をつき、国境を接する国は怒り怖れながら寡黙になっていた。佐藤にはこれらの国々の痛みがよく理解出来た。
糞スレ終了
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